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ある日、男はいつものように朝の散歩から帰って、いつものように仕事に出かけた。
だが、夕方を過ぎても男は帰らなかった。
帰りが遅くなるのは、珍しいことではなかった。
男がいずれ帰ってくることを疑う理由などなかった。
ステラは、いつものように玄関マットにおすわりして、男の帰りを待った。夜遅く、玄関の鍵を回すカチャカチャという音がした。
ステラの両耳がピンと伸びた。
しっぽを振って、ドアに駆け寄った。
タイルで滑って転びそうになった。
ドアが開いた。
男はいなかった。
男の妻と、涙で瞼を腫らした幼い息子が入ってきた。
ステラは、おすわりをして待った。
おすわりして、一晩中男の帰りを待った。
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