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男がいた。
名前は、ここでは必要ないだろう。
いつもツイードのジャケットを着ていた。
もちろん、真夏には着ていなかったし、真冬はコートを重ねていたけれど。
毎朝、そして夕方、男は小さなテリアを連れて散歩した。
男がジャケットを着ると、仔犬は尻尾をちぎれるくらいに振って喜んだ。
ツイードのジャケットが、散歩に行く合図だった。イラスト たやす
ジャケットは、茶色と少しクリーム色がかった白のウール糸で織られていた。
テリアは耳と目の周りが茶色で、それ以外は少しクリーム色がかった白だった。
茶色のスエードの靴は、テリアの耳の色そっくりだった。
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