すれ違い 2

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すれ違い 2

「待って…まだ、話し終わってないから… 知らなかったの?僕だって行ったんだよ。何回も。 春休みの間くらい来るかなって思ってたのに、 児童館にぜんぜん来ないから… でも、そのたびにあなたは留守で。 おじさんに聞いたら、 中学の準備で色々忙しいみたいだって。 入学前に宿題もいっぱい出されたみたいで、大変そうにしているって。 それで、もう訪ねて行っちゃいけない気がして、それから行かなくなった。 4年生になって友達も増えたし、 スイミングスクールに 行き始めたのもあって、 児童館からも足が遠のいた。 あなたのことも だんだん思い出さなくなった。 いや、思い出さないようにしてたんだ、たぶん。 久しぶりに道で会ったのは クリスマスイブの日でしたよね。 長くなった髪をお下げにして、 セーラー服を着ているあなたは すごく大人に見えた。 あなたは 以前と同じように 笑って手を振ってくれたけれど…、 僕も前のように 駆け寄って話したかったのに… できなかった。 ランドセルを背負った自分が とても惨めで情けなくて、 あなたの前にいたくなかった。 その次に会ったときは、 同級生みたいな男子と 一緒でしたよね。 あなたは その時も笑って挨拶してくれたけれど、 その男子が僕のことを 「あいつ誰?チビの癖に…」って いって、 あなたの名前を呼び捨てにしていた。 すごく腹が立って、 わけもなく。 だから、挨拶も返さないで… その後も、 あなたを見かけるたびに、 普段は忘れているのに ふっと思い出すたびに、 心がざわついて、 いらいらして… なんでそうなのか分からなくて、 あなたと会いたくなくなっていったんだ。 しばらくたって、 ある日母と話していて、 あなたのお母さんと久しぶりに会ったという話になったんです。 「引っ越したんですって。 二つ先の駅の側にお家を建てて。 お嬢さんに早くお婿さんを迎えたいから、 見合いをさせたって言ってたわ。 ほら、 小学生のとき仲が良かった お姉さんよ。 覚えてる? うちにも何度か遊びに来たわよね。」って。 その時、やっと気づいたんです。 好きだったんだって。 あなたはどんどん大人になって 綺麗になっていくのに、 頑張っても追いつけなくて、 その差が広がるばかりな気がして、 それで自分にいらついていたんだ。 だから、大学を選ぶとき、 東京の大学にしようかと思ったんです。 もう、仙台にいたくなくて。 結局踏ん切りがつかなくて、 地元に残ったけれど。
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