3章

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「何をしていた?」 「…壁を、登ってました」 「なぜ?」 「帰るために」 「どこに帰るんだ?」 「寮です」 「……………」 質問攻めからの謎の沈黙。 … いやぁー、気まずいねぇ。帰りたいねぇ… …… 「帰ります…」 「あ?ちょっと待て。」 「はい」 「……………」 またもや沈黙。 そうなるなら帰っていいですかね?考え事してるなら僕いなくてもいいと思うんですよ。 誰だか知らん目の前の人の眉間のシワが少しずつ深くなっていってる。 僕が邪魔だから考え事もはかどらないんじゃないんですか? 「ついてこい、風紀室行くぞ」 「…はい」 なんでぇ?え、なんでぇ? あれかな?迷子の子供が保護者がくるまで交番で待ちましょうね〜、てきな? ………嫌だ。僕にはこの人と会話をと切らせない、もしくは気まずくならない雰囲気を作られるほどのコミュニケーション能力は皆無だから。 せめて相手が喋るタイプの人だったら良かった。 この人は……無口。 「おい、早くついてこい」 「はい」 その人はスタスタと壁に向かって歩いていき、壁に手を合わせるとそこの場所が変形した。 あっという間に道が出来上がっている。 『おい、早くついてこい』って言われる前にその人の後ろに行く。怖いもん。 道を真っ直ぐ歩いていくと扉があり、その人は躊躇なくそこの扉を開けた。 「なんか、不審者みたいなやつ見っけたわ」 「あんらぁ、身長がかわいい不審者さんねぇ」 「……」 「生徒…じゃやっぱなさそうですね」 はい、今完全に僕のシャイボタンが押されました。 そしてあの人ちょっと明るい雰囲気になってるのはなぜ?
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