3章

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「何飲むー?だいたい全部揃ってるから何でもいいよ〜」 「洋梨味の紅茶」 「ある!」 まじか、わざとありそうでないやつ言ったのに、あんのかい。 飲み物マニアかなんかなの? しれっとしすぎて突っ込み忘れたけど、引き出し一面お茶系の何かがズラっと並んでいる。 マニアじゃん。 「こう見えて俺お茶好きなんだよー?」 「へー……ふーん。」 「もうちょっと気の利いた返しが欲しかったかなー」 「わ〜!スゴーイ!」 「うん、違うね!」 これでも結構考えて考えて考え出した答えなんだけど、なにが不満なんだろうか。 褒めたたえたのに違うって言われたんだけど。 会話が途切れて淡々と紅茶を入れる姿はとてつもなく様になっていた。いつもの雰囲気とは程遠い。 「はぁ」 「……っ!」 そんな小山は顔をゆがませてため息をついた。 小山でもため息つくんだ… 「どうしたの?気の利いた事言えないのは知ってるだろうけど紅茶くれるし聞くよ?」 「……」 「……………いや、聞かなくていっか」 「えっ!?言うよ?言うけどさー」 「言うけど、なに?」 「しょうもないよ?」 しょうもないって言ってるけど、多分悩んでいることは家関係だと思う。こんな性格だけどいいとこのお坊ちゃんなんだろうっていうのは滲み出ている。 それに、なんか、うん、めっちゃ悩んでそうな顔してるし? ちなみに自分は兄が後継ぐから比較的自由にさせてもらってる。兄も休みの日とかはのびのびしてるし。いい父さん母さん。 「しょうもなくても気にしない。で、悩みは?」 「…………こないだね、学校サボって実家帰ったんだー。でね、自分の部屋行ったらさ……健康器具とかいう名の拷問器具みたいなのが置いてあったんだよね……」 「…それで?」 「それだけ。」 「しょっぼ」 学校をサボってまで実家に帰りたかったのか。 それに、自分の部屋が物置部屋になってるなんてよくある事だと思う。僕は住んでいる時すでに自分のクローゼットの中を物置にされていたのだから。 「そんなんでよく大層なため息つけたよね」 「なんか、遠回しにお前の居場所ねーぞって言われてる気がしたんだよね…」 いや、もし家族がそう思っていたとして伝え方遠回しにも程がある。 「そんなんでしょぼしょぼしないでよ」 「だって…」 「そんな回りくどいことしないから」 「…そっか、そうだよね!なんだー、俺愛されてるじゃーん」 ほんと小山の心情はコロコロ変わるもんだから扱いやすい。
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