笑顔と仮面 「僕、私。」

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「二話。」 学校に行かなくなった後、 診断を受けた。 結果は、うつ病と診断された。 外に出るのが一層怖くなった。 高校は通信制の学校に行くことにした。 授業に出席しなくちゃならない日があるけれど全日制よりよっぽど マシだった。 でも、成績が悪いなんて言う事態は本当に避けたかった。 だから、家で勉強を熱心にやった。 集中できた。 邪魔する人や音、雑念さえなかった。 今まで頭に入らなかった内容もすらすらはいった。 嫌いだった単元までもが入ってきた。 人目を気にすることがないってなんてすばらしいんだろう。 気が楽だよ。 もっと早くしとけば……。 ただ、最近気になることが一つできた。 友達のことだ。 僕に友達がいるかと聞かれればいるにはいる。 たった一人。 いわゆる男友達みたいな立ち位置だった。 何もいらない。何も求めない。 そんな考えを唯一認めてくれた。 スマホでやりとりはできる。 けれどあまりしたくなかった。 僕は友達を捨てて一人になった。 無断で会わなくなった。 そんな人間が僕。 そんな人間に友達と連絡を取り、会う資格なんてみじんもない。 そう思っていた。 だから、スマホは極力連絡系のアプリを非通知にしていた。 スマホのことを考えていることに気が付き、 気を引き締めなおし、また机に向かう。 今週の課題をすべて終わらせておきたい。 のこり数ページまで進めたとき、スマホの着信音がなった。 つい画面を見てみると、DMだった。 しかも友達から。 ”アプリを見ろ”とのことだったのでトークを開く。 めっちゃ送られてきていた。 少し申し訳ないと思いながらも既読をつけることをためらった。 しかし、勇気を出してトークを開いた。 そこには、一枚の写真と短い文章があった。 写真は、友達がタキシードを着て仮面を手に持ち、 顔を半分隠して舌を出している写真だった。 少し茶目っ気が出ていた。 こんな顔を見てしまうとどうしても口元が緩んでしまう。 そして、文章には、 「僕は、いや。  私は遥香。  ぴちぴちのショートヘアのJK☆」 …………顎が外れかけた。 自分と同じような存在。 そう理解した瞬間、僕は今までしてきたおふざけを反省し、 自分の罪を懺悔し、思考回路が止まった。 顔は、真っ赤になり、今にも火が出そうだった。 課題は……徹夜で終わらせる羽目になった。
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