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finish 「四話」
交際を始めてもう三年。
高校も終わりが近づき、成人式が数年後というところまできてしまった。
時の流れの早さは侮れない。
さて、もう良いだろう………
「ただいま~♪」
「おかえりー」
今、遥香は僕の家に住んでいる。
なんでかと言うと、遥香の両親が数か月だけ海外で仕事をすることになったのだ。
遥香は日本に残ったけど、親戚はほぼ田舎にいるから近くの僕の家に来たって訳。
「元気だな、疲れてないのか?」
「学校ぐらいへっちゃらよ。
逆に弱すぎるんじゃない?」
「うっ……」
図星だな。
「さ、買ってきたプリン食べようっと。」
事実上の同棲生活。
こっちの気が弱いから色々言われる日々。
少しうるさいまであるし、一言余計なこともある。
それでも一緒にいたいんだけどね。
さて…
「プリン食い終わったらこっちの部屋に来てくれ~。」
「わかった~。ん~!やっぱ限定って特別感あるし、美味しいんだよねえ~♪」
~数分後~
「で、急に呼び出してどうしたの?レポートのデータでも紛失した?」
「いや、そろそろお互い話そうと思ってね。僕たちともに、変装をし始めた理由。」
「話さなきゃだなって思ってた所だよ。
ナイスタイミング!」
「一応真面目な話だぞ。」
「あ、そっか。ごめんごめん」
「僕から話すか。」
僕は男で生まれてきた。
体も男の子の体つきだった。
でも、幼稚園に通う少し前ほどだろうか。
少し違和感を覚えた。
僕がやろうと思ったことはやんわりと流されていた。
少し女の子っぽい遊びだからかな?
と親からは言われていた。
しかし、小学生になると周りとの考え方の違いが顕著に表れた。
僕は赤が好き。部屋で遊ぶのが好き。絵本が好き。
確かに女の子が好きなものとかだけど、そこまで気にするほどか?
と自分では思っていた。
しかし、クラスの男子からは変だと常に否定され続けてきた。
僕は耐えられなくなっていった。
それから、僕は変わった人間として接されてきた。
普通に僕に近づく人なんていない。
学校だと、同調圧力なんてものじゃないほど圧がかかる。
そして、ある日、心が壊れた。
両親に転校したいと言って、別の学校に移った。
そして、僕は女装をした。
元々声は高かったし、少し女性らしい声に近づけると周りはそれ以上
疑わなくなった。
そして、僕は自分は変だととがめられ続けたから、笑顔が嫌いになった。
最初は優しくしてくれても、後々変わっていく。
それがいやで、自分を知られたくなくて。
仮面をつけた。
「これが僕の話。じゃあ、君の番だよ。」
「え?ああ、話すことなんてないよ。」
「いや、理由もなく男装しないだろ。」
「ほんとにないよ。」
「本当か~?」
「だって、いち早く女装してるのに気づいたんだもん。」
え?
「ずっときづいてたのか?え、転校初日から?」
「うん。なんか違うな~って思って少し調べたら持ち物に男の子用のものが混じってたもん。」
マジかよ…………
「で、それから私も真似してみたんだ。」
「もしかして理由真似してみてそれが気に入ったから?」
「そそ、だからクラスの人には男装してることを言いふらさないでって口止めしてたもん。」
「だから…………ずっと近づいてきたのか?」
「うん、そうだよ。だって、一人って寂しいじゃん。」
だから………か……………。
「私、実は養子なんだ。早くに実の両親は亡くなっちゃったから。
だから知ってるんだ。独りの怖さとか、寂しさとか。」
「そうだったのか………お互い色々複雑だな。」
「さ、暗い話は置いといて、最近近所にカフェがオープンしたんだよね。
で、そこのパフェがめっちゃおいしそうでさ!今から食べに行かない?」
「さっきプリン食べただろ。」
「えー、いいじゃん別に~。あと私太りにくいし。」
「体形気にしてるじゃねえか。まあ……行くか。」
「やった~!ほら、出かける準備して!」
そういうと廊下を全速力で走って自室に飛び込んでいった。
まったく、スイーツのことになるとすぐこうだ。
でも……………意外だったな。
最高の理解者は親だと思ってたけど、まだいたんだな。
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「パパ~、おまんじゅう食べた~い!」
「さっきリンゴ食べただろ?まったく、誰に似たんだか。」
「別にいいじゃない。私もおまんじゅう食べたいし。」
「似てるなあお前ら………」
遥香とは結婚し、幸せな家庭を築いている。
昔と性格も変わらず、相変わらず明るい。
「あなたは食べないの?」
「いや、食べるけどさ…早くない?」
「ん?何が?」
「食べるスピードだよ!もう二個目食べ終わってるじゃん!」
「だっておいしいんだも~ん♪ね~。」
「ね~!」
「食べすぎるなよ?」
そういってまんじゅうの包装をやぶき、一口かじる。
自然と笑みがこぼれた。
今ではすっかり、社会に適合し、うつ病も完全に回復した。
でも、やっぱり捨てられないものがある。
仮面とカツラとドレス。
これからもずっと残したい。
だって、僕の理解者を呼んでくれた、かけがえのない、この世界で一つだけのものだからね。
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