フウフウ鳥が歌う夜

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 今日は顧客との打ち合わせがあるから会社には行かなきゃなんない、暗くなったら電気はこのリモコン、寒いときはこのタオル、外は野良猫とかいるから出たら駄目、誰か来ても返事しちゃ駄目とあれこれヒヨコに説明し、ダッシュで駅に向かい、到着予定時刻ぴったりに会社のデスクにリュックを滑り込ませた。  息をついてスマホを覗くと、LINEが二件。  紺野梨花。  樋口和美。  二つとも用件は分かっている。  僕は先に紺野梨花をタップする。画面にハートのスタンプが咲き乱れる。朝の挨拶代わり。僕も同じくらいハートの舞うスタンプを返す。  もう一つも、中身は想像がつく。  ――今度のGWあたり、いい加減帰ってきなさいよ。父さんも母さんも、たぶんもう怒ってないよ。もう四年だよ……。  そっちの問題じゃないんだよ、姉貴、と僕はさっと開いてすぐ閉じる。既読だけはつくように。  ――イラストレーターのどこが悪いんだよ!  地元の会社を辞め、両親に威勢よくそう言い放って東京へ来た。  それなのに、僕はまだイラストレーターになっていない。ネットでごくたまに売れる絵は、ひと月の電気代にもならない。イラストレーター大先輩の蛭子能取の名言が胸に痛い。  ――夢が叶ったって言えるのは、それで稼げるようになったときだ。  デスクのパソコンの電源を入れると、大きめのモニターに小さな広告デザイン会社のロゴがクルクルと回った。
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