フウフウ鳥が歌う夜

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 さっと風呂に入って部屋に戻ると、ヒヨコはテーブルの上でタオルにくるまっていた。 「君は夜行性?」 「いつもはそうだけど。今日は寝るわ」  僕がベッドに転がると、ピッと電灯のリモコンの音がして電気が消えた。常夜灯の仄かなオレンジの暗さに目が慣れたころ、修学旅行の消灯時間後のような雰囲気でコソコソとヒヨコが囁いた。 「ねえ。あなたは卵だったとき、何考えてた?」  僕もつられてヒソヒソ声になる。 「僕たちは卵から孵らない。君たちは殻の中で何か考えてるわけ?」 「そうよ。卵から孵ったら何がしたいか、ずっと考えてる。人生……じゃない、鳥生は一度きりだもの」  LEDの常夜灯が古い電球のようにすっと明滅した気がした。僕も修学旅行の夜に打ち明け話をしている気分になった。 「さっきの『いろいろ』だけどさ。梨花を僕の親に紹介したいんだけど、できなくて。ずっと親と話してなくてさ。気まずくて」 「ふうん」  ヒヨコは静かにそうつぶやくと、少しだけ声のボリュームを上げた。「そうだ。歌、歌ってあげるわ」  僕はわざと鼻で笑った。歌なんて照れくさい。「いいよ、別に」 「フウフウ鳥の歌声はきれいだって評判なのよ。聞いてよ」  分かったよ、と僕が言う前に、ヒヨコは「ロルラ……」と巻き舌のような音で歌い出した。
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