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プロローグ
何も変わらないただの日のように
機械的に自分の顔にメイクを施してゆく。
どん底まで落ちよう、とことんまで自分を打ちのめそう、
そうすれば、あとは這い上がるだけ。
これ以上傷つきたくない、これ以上悲しみたくないから、
一番一番奥底の、これ以上ないぐらいの底の底まで自分を落とすために
”失恋“で検索したプレイリストを手元のスマホから流す。
何曲目かの“失恋"ソング。
眉を描く手が、ふと止まる。
♪100回くらい忘れようとしたけどもうダメだよ
気づけばいつもお前のことばっかり思い出してた
今更だって分かってるけどやっぱり好きだよ
逢いたいよもう一度またやり直したい………
聞いたことのない曲だった。
絞り出すような男性ボーカルの声に、気づけばどんどん涙が溢れていた。
あまりにも、わたしの気持ちにピッタリ過ぎる…。
忘れようとしてもダメなんだよ、
もう一度、やり直したいよ…。
『…ファンデーション、落ちちゃう…』
何度も何度も、メイクをいちからやり直した。
どん底まで落ちる作業は、朝からやっちゃあかん。
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