inside of me

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まだ肩で息をしたまま、(こう)がわたしの頭を左鎖骨の下の窪みに乗せた。 抱きつくように皓の右肩にわたしの左腕を回して かなりの時間、放心状態だったと思う。 考えることもせず初めに発した言葉は 「嬉しい」 だった。 他に何も言いたいことはなかった。 皓はわたしの髪に顔を擦り寄せて(うず)め、 「……俺の方が100倍嬉しい」 と囁いた。 喜びで胸が(くすぐ)ったい。 ドキドキが()まない。 『治った?』って聞きたかった。 でも、皓の今までの苦悩を想うと聞けなかった。 わたしの心を見透かしたように 「……治った、かな?(笑)」 冗談めかして、でもまだ自信なさそうに そう(つぶや)いた。 「どうして…今日…(ため)そうと思ったか、聞いてもいい?」 踏み込むのは怖かったけど、言葉を選んで聞いてみた。 「うん……今日、(ゆい)言ってくれたでしょ? 美奈ちゃんに。『好き。大好き』って」 あーー…あの仕組まれたやつ(笑) “美奈ちゃんめ!”ってなったやつ。 「まさか後ろにいるなんて思わなくて、顔から火が出るかと思った…」 「それがね、ここに来た。ズキューーーン!って」 と、自分の胸を指さしながら皓が言う。 「そうなの?」 すぐ近くにある皓の顔を見上げる。 なんだろう、ニヤニヤしてる。 「ここにもね。ズキューーーン!って」 と、笑いながら股間を指さす。 「え、なにそれ、嘘(笑)」 「嘘じゃないよ。あの言葉を聞いたとき、間違いなく反応した」 『好き』なんて、何度も皓本人に言ったことあるのに。 なんで急に? 「俺にも言ってくれてたけどね、他の人に言ってるのを聞いて、ものすごく刺さったんだよ。『あー、本当なんだ』って。 俺さ…多分、女性を信用できなくなってたんじゃないかな?って思った。 結が、俺がいるのを知らないのに、キッパリと言い切ってくれたことで、初めて信じられた、のかもな…」
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