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皓が女性を信じられなくなったのは無理もない。
ひとつには、元奥さんに吐かれた大きな嘘。
ふたつめに、わたしが伊佐さんと一緒に過ごすと決めたとき、『他の人を好きなわたしと一緒にいて、楽しいですか?』と尋ねたこと。
そんなわたしが、いくら皓のことを好きになったと言ったところで、信用出来なかった気持ちは分かる。
「今日ね、やっと。結の心を手に入れられた実感があった」
「……よかった、疑いが晴れて(笑)」
お互いに目を見合わせて、ふふふ、と笑った。
皓が勃起不全を患った経緯は聞いていたけれど
わたしもとても不安だった。
わたしの身体では皓を気持ち良くしてあげられない、わたしに魅力がないせいだっていう引け目があった。
それが今日、払拭されたことで、深い安心感に包まれている。
「この前…昔話をしてからさ」
「うん」
「結に、俺を気遣うような、そういう顔をさせてしまってる、って思って。前より素直に甘えてくれなくなったし。欲張って『触れたい』なんて言わなきゃ良かったって、ずっと後悔してた」
皓も……そう思ってたんだ。
わたしは、そんな顔を皓に見せてしまっていたんだ。
「ごめんね、皓。そんなつもりじゃなかったの。でも、皓もね、わたしを憐れんでるような顔になってたよ?」
「そっか…俺もだったんだ。ごめんな」
お互いがお互いを気遣い過ぎて、負のループに嵌っていたんだ。
一回出来たからと言って、完全に治ったわけじゃないかもしれない。
これからも、ダメな日だってあるかもしれない。
でもそれでお互い自分を必要以上に卑下したりせず、
ゆっくりと育んで行けたらいい。
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