Do not ask

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「え、なに、大荷物!直接来たの!?」 土曜日の夕方、玄関を開けて(こう)の姿を見て驚いた。 出張先から直接来たらしい。 仕事用の鞄とボストンバッグと、紙袋をいくつも下げていた。 「ただいま!だってさぁ、保冷剤2時間ぐらいしかもたないって言うからさ〜、直接来た方が早いし、ほら会社で渡すと、(ゆい)が今度荷物になっちゃうでしょ〜?」 キッチンの床にドサドサと荷物を置いて、紙袋を覗いてる。 「あ、ごめん、おかえり。言うの遅いね」 「いーのいーの、えっとねー、結のはー、あ、まずこれ!」 金目鯛の干物を渡される。でか! 「えーすごい大きい!美味しそう〜。一緒に食べようね」 「次はね〜、これ!」 わぁ、鰻!大好物! 「うーなーぎーーー!!」 小躍りせんばかりに喜んでしまう。 「あとねー、これ!」 え、まだあるの? 「なにー、ローストビーフ!?」 「“しずおか和牛の”ローストビーフ。美味しそうでしょ、名前が(笑)」 「すごーーい、ご馳走〜!」 「あとこれね、日本酒」 「わーこれ、聞いたことある!ありがとう〜」 っていうか、多い多い。もういいもういい。 ダイニングテーブルの上がいっぱいになった。 「結、お菓子じゃ喜ばないからさ、保冷剤が必要なのばっかりになった」 「すごいたくさん、ありがとう!重かったね〜」 よしよし、と皓の頭を撫でる。 もうこういうスキンシップも、いくらでも許されるようになった。 「まーさ、お土産って言うかさ、結局2人で食べるじゃん?」 「確かに」 ここに持ってきたということは、そういうことだ。 皓とわたし、2人で食べる分。 幸せだ。 「あーー、疲れた!帰りは少し軽いかな?」 リビングのテーブルの前に、ドサっと腰を下ろす皓。 「お疲れ様。会社戻らなくていいんでしょ?帰りは家まで車で送るよ」 「ほんと?やったぁー!」 お土産騒ぎがひと段落したので、お湯を沸かし始める。 「皓、コーヒー?玄米茶?」 「玄米茶!」 皓もすっかり玄米茶ファンになった。 「はーい」 お菓子を食べないわたしの家には、お茶請けがない。 お土産物の山を冷蔵庫に仕舞いながら、中を物色する。やっぱり無いな、甘いものは。 仕方がないので、おばあちゃんっぽいけど、漬物を小皿に盛り付けた。 「お待たせ〜」 とリビングのテーブルにお茶を運ぶと、 「うん、ありがと」 と皓。 あれ?なんか急にテンション落ちてない? 疲れたのかな…。漬物が気に入らない? 「ごめんね、お菓子とか無くて。でも疲れてる時、塩分も美味しいよ?」 言い訳してしまう。 「うん、美味しそう。いただきます」 ぽりぽりぽりぽりぽり……… 漬物を噛む音だけが響く。
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