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「皓、夕飯食べてから帰る?家に着いてからご飯の支度するの面倒でしょ」
返事も待たずに立ち上がると、炊飯器から内釜を取り出した。
「あー………うん……」
なんとも歯切れが悪い。
どうしたんだろう、何か気に障ることをしちゃったのかな?
お米を2合はかり、研ぎ始める。
昼間作ったお弁当用の常備菜と、皓のお土産をどれか早速いただこう。
あとお味噌汁を作って……
頭の中で段取りを考えていると、
「ごめん、やっぱもう帰るわ」
と言いながら皓がわたしの背後を横切り
キッチンの床に置いてあった荷物を持ち上げた。
「えっ、急にどうした?じゃあ、送るよ今…」
「いや、大丈夫。電車で帰るから。また会社でね」
玄関のドアが、バタンと閉まる。
お米を研いでいたわたしは、お見送りすらもさせてもらえなかった。
皓がどんな顔で帰って行ったのかも確認できなかった。
なんで?
何が気に障った?
それとも、ただ単に疲れていただけ?
呆然としながらも手はロボットの様に米を研ぎ終え、内釜を炊飯器にセットした。
心当たりを探すも、全く分からない。
リビングのテーブルに戻って、さっきまで皓がご機嫌で座っていた場所にストンと座った。
玄米茶は、全然減っていなかった。
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