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月曜日。
皓は朝、就業時間ギリギリに来て、話す暇も無かった。
お昼休み。休憩スペースでお弁当を食べ終えて、自分のデスクに戻っても皓はいなかった。
ホワイトボードを確認すると、“T社 打ち合わせ 直帰”となってる。
直帰!?T社から??
T社はZAXのすぐ近くだ。T社から直帰なんて聞いたことがない。
………打ち合わせの後にT社の人たちと飲み会でもあるのかな。
そう思うことにして、午後の仕事を乗り切った。
“避けられているのかもしれない”という恐怖心には、敢えて蓋をした。
火曜日。
久保田さんが「新年会もまだだったし、飲みに行かない?」と企画営業部のみんなに声をかけていた。
部の飲み会なら皓も来るだろう。
帰り送ってくれるだろうから、その時にでもキチンと話したいな、と久保田さんに承諾の返事をした。
新年会と銘打ってはいるが、いつもの同僚との気の置けない飲み会だ。
場所もよく使う居酒屋。
皓のことが気になって、どうしても心ここに在らず。
日曜日から3日間、まともに目すら合わせていない。
LINEをしようにも、もし既読スルーされたら?それどころか既読すらつかなかったら?と怖くて送れなかった。
遅れてきた佐藤さんが、「森田さん、今日伊佐来ねーってね。体調悪いらしいの、知ってた?風邪か?」と、スマホ片手にわたしの隣の席の椅子をひいた。
「えっ…………そうですか。知らなかった」
決定的だ。来ないにしても、わたしにではなく佐藤さんに連絡が行くとは。
胸が苦しくなる。
あからさまに落胆したわたしに、佐藤さんが心配そうに聞いた。
「伊佐と、なんかあった?」
いけない。今は職場の飲み会なのに。
両拳を膝の上でギュッと握りしめたけど、
その手の甲に、パタパタと涙が落ちた。
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