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「何度も言おうとしてたんだけどさ…。逢った時も、電話でも、結菜から早々に切り上げられてる感が強くてさ、怖くて言い出せなかった。結菜を傷つけた俺なんかが、って…。
だけど俺は結菜とまたやり直したいってずっと思ってた。
彼氏さんの前で失礼なのは分かってる。
でも、考えてみてもらいたいんだ。
こんなこと言えた義理じゃないって分かってた。だから忘れようとしてた。忘れようとしたけど、忘れられなかったんだ………。
“嫌いになったわけじゃない”って、いつか言ってくれたよな?」
こんな悲痛な面持ちの修を、初めて見た。
一年前のわたしなら、飛び上がって喜んだのかもしれない。
「返事は急がなくていいから、考えてみてくれ…」
頭を下げる修に、わたしは言った。
テーブルの下の皓の手を、ギュッと握り返しながら。
「修……ありがとう」
パッと顔を上げた修に
「でも、ごめんね。わたしは皓……伊佐さんと一緒にいたいの。
修とよりを戻すことはないよ。
修のことは、嫌いになったわけじゃない。それは本当のこと。でもね…
もうわたしにとって一番大切な人は皓なの。
皓と離れることは、もう考えられないの」
確固たる決意を、皓にも修にも感じ取って貰えるようにキッパリと言った。
『皓と離れる』と言葉に出しただけで、脳が反応して涙が滲んだ。
絶対絶対、それだけは嫌。
そう強く思った。
テーブルの下では、皓が一度離した手を
指を絡ませて強く握り直してくれていた。
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