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エピローグ
あれから約半年。
季節的に心配された天候も、梅雨入り宣言が嘘のように真っ青に晴れ渡っていた。
新緑が目に眩しい広い庭園で、真っ白なフィッシュテールドレスを身に纏った美奈ちゃんが
喜びに溢れた笑顔を輝かせていた。
隣にはもちろん、タキシード姿の佐藤さん。
4月から転勤になった佐藤さんに着いていく形で、美奈ちゃんも朝井企画を退職した。
引き継ぎもあった為、この時期に急遽の結婚式となった。
青々とした空の下のガーデンウェディングは、明るい美奈ちゃんにピッタリだった。
皆んなに囲まれて幸せそうな美奈ちゃんの姿は、
見ているこちらまで幸せな気分に浸らせてくれた。
デザートブュッフェには、サンドイッチや軽食も多く並んでいて、甘いものを欲しないわたしとしてはとても有り難い。
美奈ちゃんの采配かな。
わたしの隣に、白ワインのグラスを2つ持った男性がやってきた。
「はいどうぞ。綺麗だね〜」
「ありがとう。うん、すごく素敵。あのドレスも軽やかで、美奈ちゃんによく似合ってる」
「結は……きっと、もっとスレンダーなドレスが似合うな〜。こーゆーの……なんて言うんだっけ?」
と、皓が手でドレスの形をつくる。
「マーメイド?あれは、スタイルが良くないと無理だよ」
「じゃあ、式に向けてダイエットする?今のままで充分綺麗だけど…」
そう言った皓は、白ワインのグラスを手近なテーブルに置いて、ポケットから小さなリングケースを取り出した。
え………?
皓は、わたしのグラスも取り上げて置いた。
「結婚して、貰えますか?」
リングケースをパカッと開けると、指輪が輝いていた。
ダイヤモンドが途切れることなく並んでいる。
「エタニティリング……永遠?」
「うん。永遠」
「意味知ってて買った?」
「うん、知ってて買った」
「これからは、不安なことは全部聞いてくれる?」
「全部聞くよ」
「もう逃げない?離れようとしない?」
「逃げないよ。ずっと一緒だ」
人目も憚らずに、皓の首に腕を回した。
わたしを抱きしめ返してくれる皓が、「あっ、指輪落ちちゃう。しまらないな〜」と苦笑しながら一旦わたしを引き剥がし
「落とす前に」
と、左手の薬指に嵌めてくれた。
「結の綺麗な指にピッタリだ」
皓が眩しそうに微笑んだ。
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