転職

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今度勤める会社、ZAXコーポレーションは、前の会社の何倍も規模が大きい。 社員の人数も桁違いだ。 新しい環境に身を置くことが久しぶり過ぎて、 毎日が緊張の連続だった。 配属された企画営業部3課のメンバーで 小規模に歓迎会をしてくださった。 参加者はわたしを含め6名。 会社の近くの庶民的な居酒屋。 いつも会社でわたしの目の前の席に座っている伊佐(いさ)さんが、今日の居酒屋でも目の前。 少しお酒が進んできた頃、わたしの目を見ながらなんの脈絡もなく、突然「好きです!」と言った。 っ!? 「え!?!?は??……ありがとうございま…す…??」 なんと答えるのが正解か分からず、しどろもどろに返答すると 伊佐さんの隣に座っていた佐藤さんが、 「こいついっつもこういうこと言うから。挨拶だから(笑)気にしなくていいよ〜」と笑った。 伊佐さん、面白い人だな。 顔立ちも表情も、柔らかくて優しい。 何故か不思議と、“チャラい“とは思わなかった。 「いや、さっきからね。なんとなく見てたの、手元を。それで、『好きだなぁ〜』って思ったんだよ」 「…手元?ですか?」 「うん。そっと置くよね。お箸も、グラスも、お皿も。仕草も、落ち着いてる」 思い出す、修の言葉。 いつも言われていた。 おんなじ……ことを……言うのね、伊佐さん。 「無意識なんですけどね、そうみたいですね」 「あっ、やっぱり言われたことある??見ててすごく、気持ちが安らいじゃった」 わたしも安らいじゃった。 緊張してるわたしに、こうやって声をかけてくれて 優しい人だな。 大きく包み込むような笑顔に、癒される。
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