初夏

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「結菜さーん!こっちですよ」 お好み焼き屋さんの(ざわ)ついた店内に一歩足を踏み入れた途端、 よく通る美奈ちゃんの声。 「お疲れ〜!久しぶり!お待たせ」 明るい美奈ちゃんに釣られるように、わたしも明るい気持ちになる。 前の職場ーーー朝倉企画に居た時から仲良くしていた企画課アシスタントの美奈ちゃんから、夕飯のお誘いが来たのはついさっきのことだった。 なんだかんだバタついていたから、一緒に食事をするのはさん、しぃ……うん、4ヶ月振りぐらいかな。 わたしの送別会が最後。 「結菜さ〜ん、会いたかったよぅ」 席に座る前に一度ハグ。ここまで懐かれてしまっては、こちらとしても可愛くてたまらない。 生ビールを飲みながら、お好み焼きを2種類頼んでシェアする。 暑くなってきたから、生ビールが美味しい。 この世に『運転代行』という職業を作ってくれた人に、ノーベル賞あげたい。 平和だ。 「イカ食べたい。頼んでいい?」 「いーですねー!イッカ!イッカ!」 途中からサワーに切り替えた美奈ちゃんも、酔ってきているのだろう。 意味不明な掛け声と共に注文用タブレットに手を伸ばす。 ほんとに可愛い。 「ところで〜、結菜さん大丈夫ですかぁ??」 「あー、新しい職場?楽しくやってるよ〜、みんないい人ばっかりで」 「違くて」 何を聞かれるのだろう。 相手が勘のいい美奈ちゃんなだけに、少し気を引き締める。 (しゅう)のことじゃないのを祈る。 「わたしねー、宮崎さんのことが好きだったんですよぅ〜」 ん!? 想像の斜め上から来た。 「そ、そうなの?」 咄嗟のことに、動揺が隠しきれないままにテンプレの返事をする。 「ですよぉ〜!随分前の話しですけどね。だって、普通に格好いいじゃないですか。だからね、ずっと見てたから分かりました。すーぐーにっ」 ビシッと、胸の辺りを指差されてしまった。 ですよねー、気づかれない方がおかしいぐらい、わたしと修は仲が良かった。
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