初夏

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「わたしはその話、富澤さんから聞いたんです。笠間さんが宮崎さんの背中に手を当てて、顔を覗き込むようにして励ましてた、って。その話し聞いたとき、笠間さんに対して『結菜さんの彼氏に手を出さないでよ!』って頭にきました」 そっか……それがきっかけで、心が急接近したのかな。 というか… わたし自身、新しい職場で頑張る日々で もうあんまり、(しゅう)の話も聞きたくなかったかな。 忘れようと思ってるのに。 『忘れよう』と思ってる時点で、忘れられてないってことなんだけど。 わたしはいつも、修に励ましてもらったり背中を押してもらうばかりで 修の気持ちには寄り添ってあげることが出来ていなかったのかもしれない。 いつの間にか修からの優しさを、当たり前のように感じてしまっていたのかもしれない。 本当の意味で、修を大切にしてあげられてなかったのかもしれない。 反省しか出てこないや。 今更反省しても、遅いけど。 だってもう、修の気持ちを取り戻すことなんて出来ない。 汚名挽回するチャンスすらない。 もう二度と逢えない、遠い人になってしまったのだから。 もしも過去に戻れるのなら 修の背中に手を回して、顔を覗き込むように励ますのは わたしでありたかったな。 そうしたら、今もまだ2人でいられたのかな。 せっかく追加注文したイカは、ひと切れしか喉を通らなかった。
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