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「お疲れ〜」
「あれ、お疲れ様です!久保田さん、大丈夫でしたか?」
解散するときには、伊佐さんは久保田さんに付いていたような……
「うん、大丈夫。もう落ち着いたし、佐藤に任せてきたから」
「あー、方向一緒でしたっけ?」
「そうそう」
……って、伊佐さんもあっちじゃなかった??
「伊佐さんも」
「森田さん、なんか考え込んでる風だったから」
『同じ方向ですよね?』の言葉を封じられて、
伊佐さんがわたしの様子を心配してくれたのだとわかる。
「えっ、そんなでした?大丈夫ですよ」
そんなに態度に出てたなんて。大人として恥ずかしい。
「そう……そっか、気の回しすぎだったかな。ごめ〜んね」
と戯けて笑う。
「伊佐さんすごいですよね」
「ん?なにが〜?」
「みんなのことよく見てて、ぜ〜んぶ丸くおさめちゃうとこ。すごいです。尊敬します」
わたしも少なからず酔っている。まっすぐに褒めてしまった。
「やめてよ〜、俺そんなんじゃないよ(笑)」
いや、そんなんです。
心から尊敬できる。
滑り込んできた電車。伊佐さんにお辞儀をして「お疲れ様でした」と告げた。
顔を上げると姿がない。
「??」
キョロキョロすると、電車の中に伊佐さんのすました顔があって、
可笑しくて笑いながらわたしも電車に乗った。
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