4/7

112人が本棚に入れています
本棚に追加
/122ページ
「お疲れ〜」 「あれ、お疲れ様です!久保田さん、大丈夫でしたか?」 解散するときには、伊佐さんは久保田さんに付いていたような…… 「うん、大丈夫。もう落ち着いたし、佐藤に任せてきたから」 「あー、方向一緒でしたっけ?」 「そうそう」 ……って、伊佐さんもあっちじゃなかった?? 「伊佐さんも」 「森田さん、なんか考え込んでる風だったから」 『同じ方向ですよね?』の言葉を封じられて、 伊佐さんがわたしの様子を心配してくれたのだとわかる。 「えっ、そんなでした?大丈夫ですよ」 そんなに態度に出てたなんて。大人として恥ずかしい。 「そう……そっか、気の回しすぎだったかな。ごめ〜んね」 と(おど)けて笑う。 「伊佐さんすごいですよね」 「ん?なにが〜?」 「みんなのことよく見てて、ぜ〜んぶ丸くおさめちゃうとこ。すごいです。尊敬します」 わたしも少なからず酔っている。まっすぐに褒めてしまった。 「やめてよ〜、俺そんなんじゃないよ(笑)」 いや、そんなんです。 心から尊敬できる。 滑り込んできた電車。伊佐さんにお辞儀をして「お疲れ様でした」と告げた。 顔を上げると姿がない。 「??」 キョロキョロすると、電車の中に伊佐さんのすました顔があって、 可笑しくて笑いながらわたしも電車に乗った。
/122ページ

最初のコメントを投稿しよう!

112人が本棚に入れています
本棚に追加