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「すみません、逆方向なのに」 もう一度お辞儀をする。 「いや違うの、こっちに用事があるんだよ」 えー?こんな時間から、『こっち』のどこにどんな用事があるって言うのよ(笑) どこまでも茶化して答える伊佐さんを、『カワイイな』と思った。 「さっきしてた、思案顔の意味も気になってたしね」 「あーー……それは……。わたしにも、伊佐さんの『スキル』が欲しかったな、って思ってたときですかね?」 「スキルぅ〜??持ってない持ってないそんなの」 「いえ、すごい才能だと思います(笑)」 「『欲しかったな』ってことは、過去にそういう場面があった、ってことだよね?」 「…………」 朗らかで優しいだけじゃなく、この人鋭い。 思わず言葉に詰まってしまった。 「あ、突っ込みすぎ?言いたくなかったら、控える」 口をチャックで閉める仕草をする。 古い、古いよ伊佐さん。 「突っ込みすぎなんて……。確かに、ありましたね。わたし、人の気持ちに寄り添うのが下手みたい」 「そうかなぁ?そんなことないと思うよ。周りが忙しい時に、率先してお茶を()れてくれたり、片付けしてくれたり、雑用引き受けてくれてるの、みんなわかってるよ」 「……一番下っ端なんだから当たり前です」 「下っ端!(笑)」 え、なんか変なこと言った?(汗) 「たまーにそういう言葉使うよねぇ〜、その顔から出てくるからビックリする(笑)」 ……どんな顔よ。 「え、なんて言えば……ペーペー?」 「ペーペー!!!」 伊佐さんは、更に大笑いした。
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