112人が本棚に入れています
本棚に追加
/122ページ
°°°°°
明るい朝日が窓から差し込んで、秋なのに部屋の中はポカポカしていた。
わたしの右耳と、肩も温かかった。
修の左鎖骨の下の窪みに、スッポリとおさまっていたから。
左腕で、肩を抱えていてくれたから。
わたしがスリスリすると、修の長い腕が、わたしの肩をギュッと抱き寄せる。
長い、長い、腕。
長い、長い、指。
ポカポカ、ポカポカ……
サラサラのシーツも気持ちいい。
替えたばかりのシーツって、どうしてこんなに気持ちがいいんだろう。
サラサラ、サラサラ……
シーツの気持ちよさに足を少しバタつかせ、そのまま修の足に絡める。
足も長い……頭ひとつわたしの方が下にさがっているのに、修の爪先まで全然届かない。
ん〜〜〜、好き。
ん………あれ?
いいのかこれ。
「ねぇ、修?」
「ん…なに」
寝てたっぽい。起こしちゃったか。
でもこれだけは確認しないと。
「ねぇ、いいの?これ」
「なにが」
こっちに向き直り、今度は両腕でわたしを抱き締める。
あぁ、幸せ……じゃなくて。
「……笠間さんだよ」
「んーー、もうとっくに別れたよ。だって」
えっ!?どーゆーこと!?
嘘でしょ!?
「だって、あいつ、イカ食えないんだもん」
°°°°°
………目が覚めたわ。
美奈ちゃんのおかげで変な夢見たわ。
“イカが食えないから別れた”
ってそんなわけあるかいっ!
ご都合主義な自分の夢に、苦笑いをした。
でも、夢とは言え
腕枕してもらった感触は、やけにリアルだった。抱き締められた時の、修の胸元の温かさも、肌のなめらかさも。匂いさえも。
舞台もまさにここ……わたしのベッドだったし。
昨夜寝る前に替えたばかりのシーツがサラサラしてる。
リアルだったのも納得。
“夢とは言え”
過去の、リアルな記憶だったのだから。
最初のコメントを投稿しよう!