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誕生日
目覚めてすぐ、ベッド際の窓から天気を確認する。
毎朝の癖、のようなもの。
今日は気持ちのいい晴れだった。
自分の誕生日が晴れなのは、なんとなく嬉しい。
もう誕生日を祝う歳でもないのだろうけど、
それでも自分にとっては年に一度しかない特別な1日。
特別な1日だというのに、今年の誕生日は予定がない。
久しぶりのことだった。
毎年誕生日というのは、改めて約束なんてしなくても
恋人と過ごす日だった。
いつもより少しだけ贅沢な店を予約してくれたり、
食べたいものをテイクアウトして家で2人でお祝いしたり。
小さなケーキを買って、わたしはひとくちだけ貰った。
酒飲みゆえ、甘いものは特に欲しないのだ。
嫌いなわけでも、苦手なわけでもない。ただ、“欲しない”
そんなことも全て承知していた人とは、
別れてもう11ヶ月ほど経つ。
ここまで考えて、少なからず驚く。
もうすぐ1年かぁ……。
1年が経とうとしているのに、わたしは一体何をやっているのだろう。
同じ場所でただ足踏みだけを繰り返しているような気持ちだった。
表向きは忘れたフリをしているけど
心の中は、まるで“忘れよう詐欺”だ。
朝から、友達や家族から“お誕生日おめでとう”のメッセージが入る。
覚えててくれて嬉しい。
だけど、今夜の夕食を誘ってくれる人は、誰もいなかった。
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