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「あれっ、森田さんじゃない!?」
テーブルの横をサラリーマンが通り過ぎるな〜と思っていたら、急に声をかけられ、驚いて顔を上げる。
「えっ、伊佐さん!と佐藤さん。お疲れ様です。奇遇ですね〜。あっ、こちら前の会社でお世話になってた原口さんです。美奈ちゃん、こちらは、」
「今の会社の、伊佐さんと佐藤さん、ですね?」
「……そう。」
すごい、一回で名前覚えてる。さすが社交性の塊。
「もしよかったら、ご一緒しませんか?今日、結菜さんのお誕生日のお祝いしてるんです」
美奈ちゃんは言いながら、4人掛けのテーブルの、空席に置いてあったバッグをもう既に足元の手荷物入れに入れている。
ほんとに、社交性の神。
「えっ、森田さん誕生日なの?おめでとう〜!じゃあここは俺らが奢るか!」と佐藤さん。あれ?既に出来上がってる?
「えぇっ、そんなそんな、それは……」
とわたしが遠慮の意味で両手を振ると
「お前な〜、そういうことは言わないで、さりげなく支払いするもんなんだよ(笑)」と伊佐さんが笑う。
「いい?お邪魔じゃなければ、一緒にお祝いさせて?」
と言われてしまい、わたしも「どうぞどうぞ」とバッグを移動した。
ダチョ◯倶楽部みたいになってしまった。『どうぞどうぞ』も違ったかな。慌てて
「ありがとうございます」と小さい声で付け足した。
これも何かおかしい?奢ってもらう気満々のようではないか。
「さっきそこの立ち呑み屋でバッタリ会ってさ。もう一軒行こ〜!ってここ来たんだよ。たまたま!」
佐藤さんが経緯を説明する。道理で、少し出来上がってるわけだ。
「もう一軒って。俺は入った途端にお前に拉致られたから、あそこじゃ一杯も飲んでないよ(笑)」
あ、じゃあ、伊佐さんはまだシラフなのか。
「なんとか、お誕生日お祝いできてよかったよ〜」と
伊佐さんがにっこり笑った。
『なんとか』??
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