112人が本棚に入れています
本棚に追加
「では改めまして、結菜さんお誕生日おめでとうございまーす!」
美奈ちゃんの音頭で、3つの生ビールと1つのサワー、4つのジョッキを合わせた。
「ありがとうございます」
さっきの美奈ちゃんと2人きりの時より恥ずかしくない気がするのはなぜ。
初対面のはずの美奈ちゃんと佐藤さんは、気が合うのか酔い加減が合うのか、楽しそうに会話している。
わたしの隣に腰掛けた伊佐さんが、もう一度わたしの持つジョッキに軽くジョッキを合わせてきた。
「お誕生日おめでとう」
「あ、はい。ありがとうございます」
もう今日何度目かになるお礼の言葉。
「今日さ、3回ミスってたから、ここで会えてよかったよ」
「?はい?」
ミス??
「1度目は朝、2度目は昼、3度目は退社のとき」
「朝……あっ、」
朝は、修からのLINEで話しが途切れてた。
昼は、美奈ちゃんからのLINEで。
退社のときは、ハッキリ誘ってくれたのに、“先約がある”と断った。
「もしかして……」
「うん、知ってたよ。今日が誕生日なこと」
どうして……。
どうして知っていたかも謎だし、どうして誕生日だと知った上で、今日誘ってくれようとしてたんですか。
しかも“みんなで”ではなくて、“2人で”というニュアンスで。
自惚れや勘違いだったら恥ずかしいから言えないけど、わたしはやめておいた方がいいですよ。
11ヶ月も前に別れた元カレのことを、未だに引きずってるような女なんて。
「今日も“そっち”の方にこれから用事があるから、帰りの電車は一緒だね」
ですから。
こんな時間に、こっちのどこに、なんの用事があるって言うの。
最初のコメントを投稿しよう!