誕生日

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「では改めまして、結菜さんお誕生日おめでとうございまーす!」 美奈ちゃんの音頭で、3つの生ビールと1つのサワー、4つのジョッキを合わせた。 「ありがとうございます」 さっきの美奈ちゃんと2人きりの時より恥ずかしくない気がするのはなぜ。 初対面のはずの美奈ちゃんと佐藤さんは、気が合うのか酔い加減が合うのか、楽しそうに会話している。 わたしの隣に腰掛けた伊佐さんが、もう一度わたしの持つジョッキに軽くジョッキを合わせてきた。 「お誕生日おめでとう」 「あ、はい。ありがとうございます」 もう今日何度目かになるお礼の言葉。 「今日さ、3回ミスってたから、ここで会えてよかったよ」 「?はい?」 ミス?? 「1度目は朝、2度目は昼、3度目は退社のとき」 「朝……あっ、」 朝は、修からのLINEで話しが途切れてた。 昼は、美奈ちゃんからのLINEで。 退社のときは、ハッキリ誘ってくれたのに、“先約がある”と断った。 「もしかして……」 「うん、知ってたよ。今日が誕生日なこと」 どうして……。 どうして知っていたかも謎だし、どうして誕生日だと知った上で、今日誘ってくれようとしてたんですか。 しかも“みんなで”ではなくて、“2人で”というニュアンスで。 自惚れや勘違いだったら恥ずかしいから言えないけど、わたしはやめておいた方がいいですよ。 11ヶ月も前に別れた元カレのことを、未だに引きずってるような女なんて。 「今日も“そっち”の方にこれから用事があるから、帰りの電車は一緒だね」 ですから。 こんな時間に、こっちのどこに、なんの用事があるって言うの。
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