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不思議な、告白?
「これ持って、席取っといて」
と伊佐さんの鞄を渡される。
慌てて席を取るほど店内は混んではいなかったけど、
言われるがままに窓際の奥の席を取った。
なに飲もうかな…まぁカフェオレだな。夜になって少し涼しくなってきたから、あったかいの。ミルク増量で。あ、ここはノンスチームが選べるんだ。お砂糖はいらない、甘味は欲してない。
「はい、お待たせ」
伊佐さんが持ってきた小さなトレイには、ブラックであろうホットコーヒーと、色から、カフェオレと思われるもの。
「えっ?」
「ノンシュガーのカフェオレホット、ミルク増量、ノンスチームでしょ?」
びっくりした。ドンピシャ。
「…あ、ありがとうございます…お金…」
「いいよ」
お財布を取り出そうとしたら、バッグごと奪われてしまった。
伊佐さんの横の、出窓に置かれる。
「ビックリした?さっきのね…誕生日の件と一緒」
「はい?」
「えっとね、言いにくいけど、これから言うことは全部本当のこと。
で、分かりにくいと思うけど、とりあえず最後まで全部聞いて欲しい。質問は一番最後にお願い。
なんでも聞いてくれて構わない。すべてに今日すぐ答えられるわけではないんだけど、話せることについては必ず本当のことを話す。おけ?」
なんだろう…。改まった言い方に、少し驚く。いつもの伊佐さんじゃないみたい。
両手で持っていたカップを傾け、温かいカフェオレをひとくち飲むと、
「はい」と返事をした。
「種明かしは簡単。誕生日と、好みの飲み物のカスタムは、SNSで見た」
あぁ、あの実名登録制の…。
アカウントは持ってるけど、最近はほとんど開いていなかった。今は、写真や動画に特化した方ばかり使っている。見たくないものを見ちゃったストーリーズの…。
確かに、実名登録の方でカフェオレの話してた気がする。
「キモい?ごめんね(笑)
でも、SNSで検索してしまうぐらいには、気になってたんだ…結菜ちゃんのこと」
初めて下の名前で呼ばれて、ドキッとする。
手に持ったカップをそっとテーブルに置いて、両手を膝の上に揃えた。
これ……は……。
もしかして、告白的なアレに展開してしまうの?
本当に告白だった場合、わたしはどうするの?
修のことを、忘れることができるの?
伊佐さんを、彼氏として見ることができるの?
伊佐さんは、間違いなく素敵な男性。
人として好き。とてもいい人だと思う。
朗らかで、明るくて、優しくて、誠実。
欠点が見当たらない。
ただ、“修”ではない、男のひと。
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