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どうしてもこちらに来てくれる、と言うので
駅前のコーヒーショップで待ち合わせをした。
あの“不思議な告白”を受けた場所。
暑くも寒くもなく、微風が爽やかに吹いて
行楽日和とは、こんな日のことを言うのではないか
という気持ちよさだった。
「ごめん、待った?お待たせ〜」
改札からにこやかに手を振りながら、伊佐さんが現れた。
「おはようございます。わたしもたった今来たところで」
と会釈する。時刻は午前10時。
「ふふ〜」と嬉しそうに笑う伊佐さん。
「え、なんですか?(笑)」
少し緊張していたが、伊佐さんの笑顔で弛む。
「私服可愛いねぇ」
今日のわたしは勿論スーツではなく、レースをあしらったボートネックのカットソーに、小花柄のロングプリーツスカート。上から極太編みのカーディガンを羽織っていた。
「伊佐さんって、いつもそうやって真っ直ぐ褒めてくれますよね。お世辞かな、と気づきつつ(笑)でも、ありがとうございます」
褒められて嫌な気はしない。
「だって、可愛いものは可愛いって伝えないと、勿体無いでしょ。お世辞なんかじゃないよ」
伊佐さんも、今日はカジュアルだ。
清潔感のある綿のシャツの中には黒のタートルネック、いい感じに色の落ちたストレートデニム。気負ってない感じが、伊佐さんっぽい。
「伊佐さんも素敵です。とっても、伊佐さんっぽい」
「んーそれ、褒め言葉でいーのかな〜?」
と悩むふりをして笑いながら、コーヒーショップのドアを引いて
先を促してくれた。
「ありがとうございます」軽く頭を下げて先に入る。
「席、取っといてね」
今日も、コーヒーショップは“席を取っておくほど”混んではいなかった。
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