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濃い一日
「もうそろそろお昼だね〜」
いつもののんびりした口調に戻った伊佐さんの言葉に、スマホを確認すると11時半少し前だった。
保留の先の結論が出たことでホッとして、少しお腹も空いてきた気がする。
「ほんとですねぇ。わたし達ったら、コーヒー1杯ずつで1時間半も粘っちゃった」
「ねぇ結菜ちゃん、良かったらオススメのお店があるんだけど、お昼一緒に行かない?」
特にこの後の予定もない。愛車のご機嫌取りは、お昼を食べて解散してからでもいいだろう。
なによりわたし達は、一緒にいることに決めたのだ。
「どこですか?」
「少し遠いんだけどさ、」
伊佐さんから告げられた場所は、わたしの地元の方面だった。
電車だと乗り換えしなければならなくて、1時間弱かかる。
車でなら、30分ちょっとだろうか。
そこならわたしも、少しは土地勘がある。
愛車のご機嫌取りも兼ねられる。
「伊佐さん、もし良かったら、わたしの車で行きませんか?車だったら、30分ちょっとで着けますよ」
「あー、結菜ちゃんそういえば車持ってたよねぇ。いいの?俺が乗っても」
いいに決まってるのに、なんでそんな言い方するの?
少し悲しくなる。
「電車だと倍かかりますし…どっちみち、わたし今日車動かすつもりだったんで…」
ほら、わたしまで可愛くない言い方になっちゃうじゃない。
「変な言い方してごめんね。一緒に行こ!」
ポンポンと頭を叩かれて、伊佐さんのいつもの穏やかな笑顔を見せられれば、すぐに機嫌が治ってしまった。
なんでもお見通し。
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