濃い一日

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もう、自宅を知られたくないとは思わなくなった。 2人並んで歩いて、自宅横に借りている月極駐車場に車をとりに行く。 「こっちがわたしのアパートです。ここの駐車場借りてて」 「へぇ、隣なんだ、いいねぇ〜」 「青空駐車場なんで、しょっちゅう洗車しなくちゃですけどね」 ロックを解除して、助手席に伊佐さんを(いざな)う。 「どうぞ」 「お邪魔しまーす。初の結菜ちゃんの助手席!」 嬉しそうに笑ってくれる伊佐さんに、わたしの顔も(ほころ)んだ。 わたしも乗り込み、エンジンをかける。 スマホを操作して、ドライブ向きのプレイリストを選択し、念のためナビも起動する。 「あれ、そっちの方って行ったことない?」 「いえ、わたしの地元がその先なんで。何度も通ってますよ。念のため、ね」 脳内地図にイマイチ自信無し。 「そうなんだ。じゃあ今から行くところも、行ったことあるかなぁ??」 「なんていうところですか?」 「それは、まだ内緒。近くまで行ったら道案内するよ」 お昼を食べに行くだけのつもりだったけど、どうやら伊佐さんには行きたいところがあるらしい。 「じゃ、出発しますよ〜」 クラッチを踏んでギアをローに入れる。 「えっ!?マニュアルじゃん!!」 「……そうなんです。どうもAT車(オートマ)むかなくて…」 鈍臭いわたしは、アクセルとブレーキ間違える自信ある。 「かっけぇ〜〜〜!」 褒められちゃった。 伊佐さんって、ほんとなんでも肯定してくれる。 気分よく走り出した。
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