濃い一日

4/10
前へ
/122ページ
次へ
「そこそこ、次の信号を左に曲がって」 「はーい」 「その先のさ、左側……ほら、青い看板の」 「…“烏賊真(いかまさ)”?イカ?(笑)」 「そう。その店舗の先が駐車場だね」 イカだって。 嬉しいのと可笑しいのでニヤニヤしながら駐車場に入る。 「伊佐さん、もしかして…」 「うん、SNSで結構な頻度で食べてるよね、イカ」 やられたぁ。 それにしてもみんなして、人の顔見れば“イカ”“イカ”って。美奈ちゃんも、修、も………。 ダメダメ、今は伊佐さんといるの。修のことは思い出さないの。 「それで、今日ここ?」 わたしがイカ好きだから? 「そうだよ。もし、結菜ちゃんとご飯行けるとしたら〜って検索しまくった」 「ふふっ、ありがとうございます?(笑)」 笑いながら店舗へ向かう。 伊佐さんが引き戸を開けると、「いらっしゃいませ〜!」という威勢のいい声と、香ばしい美味しそうな香り。 お腹が空いてたのを思い出した。 賑やかな店内。 「申し訳ございません、お名前を書いて少々お待ちいただけますか?」 「あ、はい」 待つのか〜と思い予約表を見ると、すぐ次らしい。 伊佐さんが「どうする?待つ?」と聞いてくれる。 「美味しそうだし、待ちましょうよ」と言うと、 嬉しそうに笑って名前を書いてくれた。 「よかった。こんなとこまで連れてきて、『えーーー待つの!?』とか言われたら悲しかったわ」 待合席に置いてあるメニューを渡してくれながら、伊佐さんが言う。 「言いませんよ。だって、伊佐さん一生懸命探してくれたんでしょ?イカを(笑)それにほら見て!美味しそう〜」 天ぷらにしようかフライにしようか、指を差しながら真剣に悩む。 「結菜ちゃん、顔に出てる(笑)天ぷらとフライ、両方頼もう」 と伊佐さんが笑った。 伊佐さんといると、待つ時間も全然苦じゃないな、と思う。
/122ページ

最初のコメントを投稿しよう!

112人が本棚に入れています
本棚に追加