濃い一日

10/10
前へ
/122ページ
次へ
………濃い一日だった。 朝から伊佐さんと話し合って、わたしは伊佐さんと一緒に過ごすことを決めた。そして一日中共に過ごした。 自分自身、こんなに早く結論が出たことは驚きだった。 でも確かにあの時思ったのだ。 “伊佐さんを手放したくない”と…。 こう決めたことに後悔はない。 今日一日、とても楽しく過ごせた。 ドライブも、食事も、植物園も、洗車も楽しかった。 伊佐さんと過ごす時間は居心地が良く、すべてを受け入れてくれる安心感があった。 1人で過ごすより……修のことを思い出すことも少なかった。 ただ、心のどこかで 伊佐さんの好意を利用している、という感覚がまだある。 この罪悪感のようなものは、いつ消えるのだろう。 わたしが、本当に伊佐さんのことを好きになれば消えるのだろうか。 “もう誰のことも、修以上には好きになれない気がする” 退職した時のあの想いを、覆すことはできるのだろうか? ふと思い出し、スマホを手に取る。 『……(ひいらぎ)…花言葉』 検索してみる。表示されたのは、 『あなたを守ります』 胸の奥がギュッとして、息を呑んだ。 これを、あの小さな白い花を見ながら 伝えようとしてくれていたの? 咄嗟の思いつきで『痛くしないで』とふざけて良かった。 伊佐さんが爆笑してくれて、本当に良かった。 もし面と向かってあのとき言われていたら、泣き出してしまっていたかもしれない。 柊の花言葉は他にも、『信用深さ』があった。 伊佐さん、あなたにぴったりの花言葉じゃないですか。
/122ページ

最初のコメントを投稿しよう!

112人が本棚に入れています
本棚に追加