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初冬
翌朝目覚めると、LINEが1通届いていた。
着信時刻は、昨日の深夜というか、今日の早朝というか…0:30。
わたしが眠りに落ちた後だった。
『今日は1日、本当にありがとう。
一緒に過ごすことを承諾してくれてありがとう。
たくさん、結菜ちゃんの本当の笑顔を見られて嬉しかったよ。ありがとう』
短い文面の中に、3回の“ありがとう”
“ありがとう”の反対語は“当たり前”だと、いつか聞いた。
“有り難う”………有り難い。
こちらこそ“ありがとう”なんですけど。
こんなわたしを守ってくれる、有り難い人。
『おはようございます。LINE気づくの遅くてごめんなさい。
こちらこそありがとうございます。また今日からも、よろしくお願いします』
そう送って、身支度を始めた。
そういえば、わたし達の関係の名前をまだ決めていなかった。
香澄には「なんだろうね?」で済んだけど、
もし会社の人に聞かれたら、なんて答えたらいいのだろう。
また、伊佐さんと打ち合わせしなければ。
そこまで考えて、くすぐったい気持ちになる。
今までも毎日のように顔を合わせるのが“当たり前”だったけれど、
これからは、違う意味を持つんだな。
同僚としてではなく…………うーん、なんだ?
やっぱり早く、わたし達の関係性に名前が欲しい。
それは、ソワソワするような、ワクワクするような、
新しいような、懐かしいような、
そんな複雑な感情だった。
早く伊佐さんの笑顔に会いたくなった。
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