初冬

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今日もお弁当持参の日だった。 人の多い社員食堂よりも、やっぱりこっちの休憩スペースの方が落ち着くな…なんて思いながら、食べ終わったお弁当箱をランチクロスでキュッと結ぶ。 自分のデスクに戻ると、否応なしに仕事モードに切り替わってしまいそうで、スマホをいじりながら休憩スペースに居座っていた。お昼休みはまだ残っている。オンオフの切り替え、大事。 昨日撮った、烏賊真(いかまさ)の写真を見る。美味しかったなぁ〜。 SNSにアップしようかな、と編集を始める。 けれど、伊佐さんとの今の関係に名前がついていないことで、キャプションを打ち込むのが進まない。なんと書いたらいいのやら。 うーん、ストーリーズにしようかな。 美味しかった、ってコメントと、香澄の店をタグ付けすればアップ出来るし。 今の時点では、細かくキャプションなんか書けない。 天ぷら定食と、イカフライ定食と、烏賊の姿造り… 明らかに一人前の量ではない。匂わせになってしまうだろうか… ストーリーズではなく普通の投稿の方では、飲み会の写真や、同僚とたまに行くランチの写真もあげている。 気にすることないか。 ポチッと公開ボタンを押した。 目の前に、自販機のホットカフェオレのカップがコン、と置かれた。 「何してんの?」 伊佐さんの穏やかな笑顔。 「え、カフェオレ?ありがとうございます」 「どういたしまして。スマホ見ながら百面相してたよ?」 「ふふ、昨日の、投稿してました」 とストーリーズの画面を見せる。 「お、後でよく見よ。美味しかったねぇ〜」と目を細める伊佐さん。 「すっごく美味しかったです!」 「なになに、何が美味しかったの?」 突然の佐藤さんの登場に、ちょっと焦る。 「いえ、あの……お、お弁当が…」とわたしが口ごもると、 伊佐さんは察したのか「そういや佐藤、あの件さぁ…」と言いながら、佐藤さんを連れて行った。 会社の人に聞かれると、気まずい。 社内恋愛は禁止されていないし、普通に恋人同士として付き合ってるなら、いくらでも言えるんだけど。
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