112人が本棚に入れています
本棚に追加
/122ページ
今日もお弁当持参の日だった。
人の多い社員食堂よりも、やっぱりこっちの休憩スペースの方が落ち着くな…なんて思いながら、食べ終わったお弁当箱をランチクロスでキュッと結ぶ。
自分のデスクに戻ると、否応なしに仕事モードに切り替わってしまいそうで、スマホをいじりながら休憩スペースに居座っていた。お昼休みはまだ残っている。オンオフの切り替え、大事。
昨日撮った、烏賊真の写真を見る。美味しかったなぁ〜。
SNSにアップしようかな、と編集を始める。
けれど、伊佐さんとの今の関係に名前がついていないことで、キャプションを打ち込むのが進まない。なんと書いたらいいのやら。
うーん、ストーリーズにしようかな。
美味しかった、ってコメントと、香澄の店をタグ付けすればアップ出来るし。
今の時点では、細かくキャプションなんか書けない。
天ぷら定食と、イカフライ定食と、烏賊の姿造り…
明らかに一人前の量ではない。匂わせになってしまうだろうか…
ストーリーズではなく普通の投稿の方では、飲み会の写真や、同僚とたまに行くランチの写真もあげている。
気にすることないか。
ポチッと公開ボタンを押した。
目の前に、自販機のホットカフェオレのカップがコン、と置かれた。
「何してんの?」
伊佐さんの穏やかな笑顔。
「え、カフェオレ?ありがとうございます」
「どういたしまして。スマホ見ながら百面相してたよ?」
「ふふ、昨日の、投稿してました」
とストーリーズの画面を見せる。
「お、後でよく見よ。美味しかったねぇ〜」と目を細める伊佐さん。
「すっごく美味しかったです!」
「なになに、何が美味しかったの?」
突然の佐藤さんの登場に、ちょっと焦る。
「いえ、あの……お、お弁当が…」とわたしが口ごもると、
伊佐さんは察したのか「そういや佐藤、あの件さぁ…」と言いながら、佐藤さんを連れて行った。
会社の人に聞かれると、気まずい。
社内恋愛は禁止されていないし、普通に恋人同士として付き合ってるなら、いくらでも言えるんだけど。
最初のコメントを投稿しよう!