初冬

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今夜は伊佐さんはアパートの前まで送ってくれた。 このまま帰してしまうのも、なんだか他人行儀な気がして 「あの…お茶でも…?」 と言ってみた。 「いや、帰るよ。今日のところは、ね。おやすみ〜」 伊佐さんはそう言って、後ろ手で手を振って帰って行った。 わたしとしても、昨日の今日でいきなり自宅に2人きり…というのも多少の抵抗があった。 わたしの誘い方に、きっと察してくれたんだと思う。 伊佐さんはそういう人だ。 お風呂でさっぱりして、お米を研いでセットして、明日の準備も済ませた。 寝る前のルーティン、SNSチェック。 『そうだ、今日の投稿、香澄のお店の宣伝になってるといいな』と思い、自分のストーリーズを開く。 ストーリーズはあげたことがなかったから、誰が見てくれているのか興味もあった。 スマホの画面を見て、胸がドキンと音を立てた。 閲覧者の中に………修のアイコンがあったから。 そうか、わたしがフォローを外したことはまだ気づいてないのかな。 修はフォローしたまんまなんだ。 ストーリーズは勝手に流れてくるから、別に見ようと思って見たわけじゃないのかもしれない。 夏のわたしのように。 伊佐さんのことを“彼氏”と定義したのに、 わたしはまだこんな小さなアイコンひとつに、これほど心を揺さぶられてしまうのか。 情けない気持ちと、伊佐さんに申し訳ないと思う気持ち。 そんなにすぐに気持ちを切り替えることは出来ないのだ、と知った。 帰りの電車内で見てくれたのか、閲覧者の中に伊佐さんのアイコンもあった。いいねしてくれてる。 何かに(すが)るようにフォローボタンを押した。
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