切り替える

4/7

112人が本棚に入れています
本棚に追加
/122ページ
「だって、嫌いになったわけじゃないもん(笑)」 ……しくじったか。 おどけて言ったつもりの軽い言葉が、 口から外に出た途端に、重みを増す。 しまったなぁ。。。 「……あのさ、」 彼がそう言ったタイミングで、西野課長とアシスタントの美奈ちゃんが連れ立って戻ってきた。 西野課長は案の定ハンカチで手を拭いてる。 男の人って、なんでトイレの中で拭いてから出てこないかな。トイレに行ってたのバレバレ。 美奈ちゃんは、湯気のたったマグカップを3つ乗せたトレイを持っていた。 3時か。給湯室に行ってたのね。 「ねぇ、戻ってきた!」 彼にそう告げてから受話器を塞ぎ、 「課長〜、販促の宮崎さんからお電話でーす!」 と伝えて、彼に向かって「じゃあね」と保留ボタンを押した。 『……あのさ、』 の続きはなんだったんだろう…? 気にはなったけど、 ろくでもない話のような気がして、放置した。仕事中だし。 それにわたし、もうこれ以上傷つきたくないんだってば。 人を好きになる気持ちはコントロール出来ない。 彼の気持ちが離れても、わたしの気持ちに踏ん切りがつかないように。 美奈ちゃんが、わたしの席にコトリとマグカップを置いてくれたとき、心配そうにわたしを見つめていたのは何故だろうか…。
/122ページ

最初のコメントを投稿しよう!

112人が本棚に入れています
本棚に追加