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「美味しかったー!お腹いっぱいになったねぇ!ごちそうさま、結菜ちゃん」
食後のコーヒーを飲みながら、伊佐さんはお腹をさすってニコニコしていた。
「お粗末さまでした」
わたしもニッコリしてしまう。
2人でお皿をシンクへ片付けると、伊佐さんが袖をクルクルと捲り上げた。
「え?わたしやりますよ?伊佐さんあっちでテレビでも見ててくださいよ」と言うと、
「それなら2人でやっちゃおうよ。テレビも一緒に見た方が楽しいじゃん」
と、もう手にスポンジを持っていた。
伊佐さんといると、どうもお言葉に甘えてばかりになってしまう。
伊佐さんが洗ってすすいで、わたしが拭き上げて仕舞う。あっという間に片付いた。
「ほーらもう終わった。さて、テレビ?映画?それとも、お散歩でもする?」
袖を元に戻しながら、伊佐さんがわたしの顔を覗き込んだ。
お料理と掃除のことで頭がいっぱいで、何をするか考えていなかった。
でもさっきのお土産を見て、思いついたことがあった。
「あのね伊佐さん。さっき、ちょっとお高そうな日本酒あったじゃないですか」
「あーうん、そんなに高くはないんだけどね、スッキリしてて美味しいんだよ〜。最近のお気に入り」
スッキリとした日本酒…と言えば。
「伊佐さん、わたしちょっと、商店街に行きたくて。お留守番しててくれてもいいですし」
とは言ったけど、絶対一緒に行くって言ってくれるだろうな、とは思っていた。
案の定かぶせるように「俺も行く!商店街の雰囲気好きなんだよな〜」と目を細めて言った。
「だったら……あの……」
もじもじしてしまう。
「どした?」
「あの、一緒に歩くんだったら、あの……着替えとメイクを(汗)」
1人だったら、近くだしこのまま行ってしまうのだけど。
「ぶくくくくく、女の子だねぇ〜!」
「急ぎますので!」
と、メイクポーチとさっきのワンピースを持って
洗面所に行った。
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