おうちデート

10/11

112人が本棚に入れています
本棚に追加
/122ページ
日本酒も空いて、(こう)はハイボール、わたしは缶チューハイを飲んでいた。 2人とも今日は、いつもよりたくさん飲んでいる。 「ねーこれ、もうご飯食べられないね」 「そうだな〜、でも食べたかったな〜」 「あ、じゃあ。おにぎりにしといて明日の朝食べる?お(つゆ)と一緒に」 「……え?」 皓がわたしに怪訝(けげん)な顔を向けた。 わたし何か変なこと言っちゃったかな……? ……うん、言ったな。 「や、なんか……ごめんなさい、そういうつもりじゃなくて、っていうか、」 「……うん。おにぎり、食べたいな。朝」 あら??そうなった? あんなに怪訝な顔をしたくせに。 「結菜ちゃん酔っ払ってて、このまま1人置いて帰るの心配になった」 「え、それを言うなら今の皓をこれから電車で帰らせるのも心配」 「んー…うん」 「じゃあ……保温しとくと不味くなっちゃうから、いま握っておくね」 炊飯器の蓋を開けて、内釜ごと取り出す。 鮭を取り出して骨と皮を取り、内釜に戻してかき混ぜた。 戸棚から海苔を出し軽く炙り、おにぎりを握る。 気づくと後ろに皓が立っていた。 振り向いて目が合い「なーにー?」と笑うと、 皓は「“ハグ”って、身体の関係?」と聞いてきた。 ハグ?ハグはだって、親子だって友達だってするでしょ。 「うーーん、違うんじゃない?」 と答えると、後ろからそっと、そーーっとハグをした。 正直驚いた。 皓がそんなことをしてきたことにも、 背中から人の体温が伝わってきたことにも。 「結菜ちゃん、ごめん。俺、どんどん好きになってる」 胸が、キュウッとした。 純粋に嬉しかった。 抱きしめられて不自由な腕を解いて、急いで手を洗い、身体ごと振り向いた。 「あのね、わたしもです。一緒にいるの、今とても幸せです」 わたしも、逢うたびごとに、好きになってる。 毎日が、嬉しい、楽しい、幸せ、で(いろど)られている。 皓は嬉しそうに笑って、今度は正面から抱きしめてくれた。 わたしも、皓の背中に手を回した。 修とは違う香り。 でも、とても落ち着く香りだった。 その力も、温もりも、香りも、心地よかった。
/122ページ

最初のコメントを投稿しよう!

112人が本棚に入れています
本棚に追加