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予定外のお泊まりになったけど、わたしはベッド、皓はテーブルをどかして床に敷いた客用布団で別々に寝た。
キスも、勿論その先もなかった。
目覚めてベッド際の窓から外を見る。
少し曇ってる。
本当に手を出さなかったなぁ。ハグはしたけど。
皓を見ると、まだ眠っているようだ。
起こさないように、そーっとシャワーを浴びた。
部屋に戻ると皓は起きていて、お布団の上に上半身を起こしていた。
ぼんやりした顔と寝癖がカワイイ。
そっと近寄り「おはようございます」と言うと、わたしの顔を見てにっこり笑った。
「昨日の結菜ちゃんの顔だ」
あ、すっぴん!恥ずかしくなってそっぽを向くと、
またそっと抱きしめられた。
「ハグはいいんだよね?」
と不安そうに訊ねる皓。
「うん」と答えて、胸に顔をスリスリした。
「朝、ご、は、ん!」
と皓の胸を軽く押し、お汁を温める。
お豆腐と油揚げとわかめのお味噌汁。
温めながらだし巻き玉子を巻いた。
今日は冷凍しないので、作り置きの出し汁を使った。
昨夜握った鮭と大根の炊き込みご飯のおにぎりと、お漬物をダイニングテーブルに用意する。
皓はさっさとお布団を上げていた。
本当に手がかからないなこの人。
用意した朝ごはんを、大袈裟に褒めながら美味しそうに食べてくれる人がいる幸せ。
1人で食べるより、何倍も美味しく感じる。
「今日は、もう帰るね。たくさんごちそうさまでした。結菜ちゃん、ありがとう。あとはダラけてね(笑)」
と、皓は早めに帰って行った。
丸一日一緒にいたから、急に1人になって寂しくなった。
おうちデートの残骸を片付けながら、
皓はもう電車に乗ったかな?家に着いたかな?と気になる。
おうちデートは、身体の関係なんか無くても
心の距離を近づけてくれた。
ゆっくりと、少しずつ、好きが積もっていく。
お互いがそうだったらいいな、と思う。
その日は、曇ったままで
雨が降ることも、晴れることもなかった。
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