おうちデート

11/11

112人が本棚に入れています
本棚に追加
/122ページ
予定外のお泊まりになったけど、わたしはベッド、(こう)はテーブルをどかして床に敷いた客用布団で別々に寝た。 キスも、勿論その先もなかった。 目覚めてベッド際の窓から外を見る。 少し曇ってる。 本当に手を出さなかったなぁ。ハグはしたけど。 皓を見ると、まだ眠っているようだ。 起こさないように、そーっとシャワーを浴びた。 部屋に戻ると皓は起きていて、お布団の上に上半身を起こしていた。 ぼんやりした顔と寝癖がカワイイ。 そっと近寄り「おはようございます」と言うと、わたしの顔を見てにっこり笑った。 「昨日の結菜ちゃんの顔だ」 あ、すっぴん!恥ずかしくなってそっぽを向くと、 またそっと抱きしめられた。 「ハグはいいんだよね?」 と不安そうに(たず)ねる皓。 「うん」と答えて、胸に顔をスリスリした。 「朝、ご、は、ん!」 と皓の胸を軽く押し、お汁を温める。 お豆腐と油揚げとわかめのお味噌汁。 温めながらだし巻き玉子を巻いた。 今日は冷凍しないので、作り置きの出し汁を使った。 昨夜握った鮭と大根の炊き込みご飯のおにぎりと、お漬物をダイニングテーブルに用意する。 皓はさっさとお布団を上げていた。 本当に手がかからないなこの人。 用意した朝ごはんを、大袈裟に褒めながら美味しそうに食べてくれる人がいる幸せ。 1人で食べるより、何倍も美味しく感じる。 「今日は、もう帰るね。たくさんごちそうさまでした。結菜ちゃん、ありがとう。あとはダラけてね(笑)」 と、皓は早めに帰って行った。 丸一日一緒にいたから、急に1人になって寂しくなった。 おうちデートの残骸を片付けながら、 皓はもう電車に乗ったかな?家に着いたかな?と気になる。 おうちデートは、身体の関係なんか無くても 心の距離を近づけてくれた。 ゆっくりと、少しずつ、好きが積もっていく。 お互いがそうだったらいいな、と思う。 その日は、曇ったままで 雨が降ることも、晴れることもなかった。
/122ページ

最初のコメントを投稿しよう!

112人が本棚に入れています
本棚に追加