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「宮崎さん、企画課に異動になりましたよ」
伸びたチーズを器用にフォークでピザに乗せながら、美奈ちゃんがなんでもないことのように言った。
「えっ!?」
何も聞いてない。いや、会ってもいないし、報告の義務もないし、知らなくて当然と言えば当然。
「わたし今、宮崎さんのアシスタントしてます」
「だって美奈ちゃん、わたしの代わりに入った人のアシだったでしょ?2人分やってるの?」
「その人ねぇ、先月辞めました」
マジか…。まだ8、9ヶ月ぐらいじゃん。
「宮崎さんねぇ、2年ぐらい前から、異動願出してたらしいです」
2年前!?ちょっと待って、それも聞いてない。
その時はわたし達付き合ってた。
彼氏と彼女の関係だったはずなのに。
どうして話してくれなかったんだろう。
「企画を、やりたがってた、ってこと?」
「そうみたいですよ〜。わたしも最近聞いたんですけど。宮崎さんから。
で、新人が辞めたタイミングで、上が“だったらやる気のある宮崎にやらせよう”ってなった、って。販促課の方も、宮崎さんが異動になって人が足りなくて大変みたいですけど」
わたし、本当に何も知らなかったんだな、と思い知らされる。
修がどんなことをやりたがっていたか
どんな夢を持っていたか
どんな悩みを抱えていたか
何を考え、どう思っていたのか…。
わたしが転職の相談をしたとき、修は確かに言った。
『なんなら俺がやりたいわそれ!』
あれは本心だったんだ。
わたしはやっぱり、
修の心に寄り添えていなかった。
何も気づいていなかった。
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