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何故、“身体の関係”に拘るのか。
そう思ったのは、今日が初めてではなかった。
皓は、最初の頃からわたしに触れるのを躊躇っていたと思う。
電車から降ろす時も鞄で押された。
並んで歩く時も手を繋いだりしなかった。
植物園で『腕組んでもいいよ』と肘を差し出されたけど、あの時も冗談半分…いや、わたしが断ることを前提で言ったように感じた。
ニュアンス的に、冗談の比率の方が大きかった。
いつもいつも、違和感があった。
わたしのことを好きだと言うのに、線を引かれている気がしていた。
皓のことを“好きだ”と感じるたびに、
わたしは一歩ずつ皓との距離を詰め
けれど皓は一歩ずつ後退して。
いつまで経っても近づけない、2人の間を風が通れる距離感があった。
おうちデートをきっかけに、やっとハグ出来る関係まで近づけたのに、一向にその先に進もうとしないのは、皓が自ら言った『身体の関係はナシで』という言葉に、皓自身が呪縛されているのではないのか。
わたしがセックス自体がしたいというわけではなく
その“呪縛”で皓がいま一歩わたしに踏み込めないでいるのだとしたら。
皓が自分自身を抑えているのだとしたら。
皓に我慢させているのだとしたら。
それが悲しかった。
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