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「今日……泊まってってもいい?」
さっき『少しだけお邪魔するね』と言った皓が、急に意見を真逆に翻した。
ちょっとビックリする。
あれ以来、2回目のお泊まり。
「うん、勿論いいよ」
と答えた。
わたしは皓と一緒にいる時間が心地いい。
嬉しくて楽しくて幸せ。
明日はお休み。断る理由など何ひとつない。
「じゃあ、遠慮なく」
どうぞどうぞ。(ダチョ◯倶楽部再び)
と思っていたら、どうやら“遠慮なく”は
“泊まる”ことではなく、“呑む”ことにかかる修飾語だったらしい。
皓は手酌でビールを継ぎ足した。
「ビールでいいの?ハイボールもあるよ?」
と言いながら返事も待たずに向かった先は、キッチンではなくウォークインクローゼット。
オーバーサイズのトレーナーと、緩めのスウェットを用意し、
「スーツじゃリラックス出来ないでしょ。着替えたら?」
と手渡した。
「今度、皓の着替えも一揃え置いとくようにしようか。洗面所どうぞ、着替えに使って?」
「うん、ありがとね」
そう言って洗面所に向かいかけた皓の後ろ姿に、
「あ、お風呂沸かした方がいい?」
と聞いた。
別に変な意味で言ったわけではない。
“泊まる”を前提にしたとき、シャワーもしくはお風呂には入りたいだろうと、純粋に思っただけだった。
皓の背中が、ピクッと動いた。
あ、これ……何かを誤解させてしまった…?
そのことに気づいた時には、もう遅かった。
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