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「勿論その時は、生理だなんて思いもしなかったから……心臓が止まるかと思った。俺はなんてことをしてしまったんだ、って……。結構な出血量だったし、慌てて救急車を呼ぼうとした俺に、彼女が土下座して謝ったんだ……血の染みも鮮やかなベッドの上で、裸のままで。その日から、俺は……」
あぁ………
その時の皓の気持ちを思う。
どうやったって、全てわかってあげることはできないけれど、
どれほど……どれほどショックだっただろう。
自分のせいで出血させてしまったと思っただろうし、
信じていた彼女……奥さんに、嘘を吐かれていたことも。
「その日から俺は、勃起不全になってしまったんだ。彼女はそんな俺の元から、去って行った。他の女性でもダメだった。
だけど、結菜ちゃんといる時…たまに、反応があったんだ。だから、結菜ちゃんとなら出来ると思った。思いたかったんだ。でも……つらい思いさせたね」
あの日。
不思議な告白を受けたあの日。
皓は言った。
“俺はね、女性を幸せにしてあげることが出来ないんだ。本当の意味では”
「皓……ごめんなさい」
「ふっ。なんで結菜ちゃんが謝るの?」
「昨日……問い詰めるように聞いてしまって。ほんとに…ごめんなさい…」
最後は涙で、声が震えた。
皓が今まで背負ってきたものの重さを知った。
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