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spカモン
「うんうん、僕の思った通りだ! 似合ってるよ! 」
「......」
龍羅木の見ている先には、スーツを着てサングラスをしている鯉谷がいた。とっても不満そうな顔をしている。
-数時間前-
「付き人? 」
龍羅木は新しくオレンジジュースを取り出し、自分と鯉谷のグラスに注いだ。
「そう。話を聞くところ喧嘩慣れしてるようだし、鯉谷くんは見た目もとっても怖い。僕に話しかけてくる大人は少なくなると思うんだ」
「でも、それじゃお前が孤立しちまうんだろ? 」
それを聞くと龍羅木は、少しばかりはにかんで答えた。
「僕は、友達といれればそれでいいんだ」
それもそうかと、鯉谷は龍羅木の友人論に納得した。
-数時間後-
リムジンは龍羅木の住んでいる高層マンションの前で止まった。
「ここの五十二階から六十階までが僕の家だよ」
「はえぇ......」
鯉谷はそのマンションを見上げた。見上げすぎてしりもちをついてしまったし、口もあんぐりと空いていた。
「じゃあ入ろう」
専用の機械にカードキーを押し当て、オートロックを解除する。すると、広いエントランスの自動ドアが開き、主人を迎え入れた。
「すげぇ、防犯対策バッチリだな」
「お陰様で一回も空き巣に入られてないよ」
笑いながらエレベーターに入っていく龍羅木。鯉谷はそれを慌てて追いかけていった。
ガラス張りエレベーターから外の景色が見える。絶景という他ない。貧民街で人間の汚いものばかりを見てきた鯉谷にとって、この世の何よりも美しい光景であった。ガラスに顔を押し付け、目をキラキラさせながら見ていた。
「うへぇすげぇ! なんだこれ! 」
「きれいだよね。この景色、僕も好きなんだ」
そして、目的の部屋につく。
「ここがいつも使っているリビング的な階だね」
「はへぇ。広いなぁ......」
見渡す限り高級感で満たされている。ガラス張りで外が見える壁際には、とても大きな液晶テレビが。その向かいには、フカフカで気持ちの良さそうなソファ。その絶景に、鯉谷は見惚れていた。
「まあとりあえず、お風呂に入ってきて。それまでに新しい服を用意するから」
「おう!! 」
風呂ももちろん豪華の極みであった。
「ふう......うおお! ボコボコってした!! ジャグジーだ!! 」
湯船から出ると、一つの部屋があった。
「アッツ! サウナかこれ! 」
出たあとに水風呂に入った。脱衣所の冷蔵庫にはスポーツドリンクが用意されており、至れり尽くせりてあった。
「はああ気持ちよかったー」
久しぶりにさっぱりして風呂から上がると、龍羅木がニヤニヤしながら何かを準備していた。
「ん? 何してんだ龍羅木」
「んん? 鯉谷くんの新しい服だよ」
鯉谷の嫌な予感は的中した。
「うんうん、僕の思った通りだ! 似合ってるよ! 」
「......」
龍羅木の見ている先には、スーツを着てサングラスをしている鯉谷がいた。とっても不満そうな顔をしている。
「なんで俺がこんな格好......」
「付き人といったらこれでしょ! 完璧だよ! 」
龍羅木はこれ以上ないぐらいのグーサインを鯉谷に向けた。笑った際に見せた歯が、キランと光った気もする。
「ったく......」
しかし、こんな二人に予期せぬことが起きる。
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