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境内から出てきてそこに立っていたのは、真っ黒に日焼けした男の子だった。小柄で全身に無駄な肉が見当たらないほど細い。半袖を肩までたくし上げ、そこから伸びる腕と手もやっぱり細かったが、二の腕には引き締まった筋肉がでこぼこと滑らかに波打っていた。短パンからにょきっと伸びる二本の黒い足も同じだった。
鋭い目つきでこちらを見ていたが、恐ろしい感じではなくて、むしろ尊い何者かに見えた。奉られている神様とでもいえばいいだろうか。少年の神様。
彼の周りには白くぼんやりと光る何かが禍々しく沸き上がっていた。何度か瞬きしてようやくそれが、体から吹き出す汗だと気がつく。
それでもまだ神様ではないだろうかと疑う私は、じっと彼を見つめた。
「なんばしよっと?」
男の子が不思議そうに尋ねる。
私は答えない。神様なら私の心も読めるはずだから。
「なんばしよっとね?」
男の子は一回目より大きな声で尋ねた。
(寝ていました。神様ですか?)
私は心の中で強く念じながら男の子を見上げた。
「聞こえんと?この辺の子どもじゃなかろ?なんばしよっとね」
心の声が届いていないとわかると、私は肩を落とし心の中で話しかけるのをやめた。
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