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「海がいい!」
サトちゃんが元気に勢いよく叫ぶ。
「いや、海はダメやろ。台風近づいとるけん荒れとるばい」
レンくんが嗜める。
「天気はいいのにねぇ」
リッちゃんも残念そうな顔をした。
「芝は?」
「ああ、芝畑行くか。初めて見るならいいかもな。ミコ……ちゃんて呼んでいいと?」
レンくんが遠慮がちに尋ねる。
うん、とうなづく。
「ミコちゃんは芝畑見たことある?」
首を横に振る。
「じゃあそこに行こうか。芝畑以外何もなかばってん、鬼ごっこしほうだいやし、何か気分はよくなるばい!」
レンくんがにやりと笑った。
そのときの私は芝畑というものが想像できなかったし、芝畑を見て気分がよくなるとかとうてい理解はできなかったけれど、とりあえず連れて行ってくれるというので行くことにした。
自転車を持っていない私が突っ立っていると、気がついたナオちゃんが声をかけてくれた。
「俺の後ろに乗る?」
だけどナオちゃんは小柄で、自転車も小さく私が乗るには無理なように思えて、首をかしげたまま困惑の表情を浮かべた。
「お前のは小さいから無理やろ。俺のでよかなら乗っていいばい。どうせ坂道だらけやし、途中歩かなきゃいけんばってん」
レンくんの言葉に甘えて後ろに乗せてもらう。せっかく誘ってくれたナオちゃんに申し訳なく思ったが、彼はさっさと先頭を走り出していた。
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