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 すぐ着くのかと思ったが、自転車で三十分くらい走ったあとはずっと急な坂道で私たちは自転車を押して歩いた。自販機もほとんどないということで、早めに飲み物を蓄えて自転車のかごに放り込む。  ナオちゃんやレンくんは慣れているようで、自転車を押しながらもすいすい歩いて行く。リッちゃんも遅れを取らずについて行く。サトちゃんと私はみんなから離れてのんびりと登った。  のんびりと歩いているはずなのに、足を一歩踏み出す度に全身から汗が吹き出す。何もしなくても汗が滲み出すこの季節にわざわざこんな坂を登るなんて自殺行為。登山の方が楽にさえ思えた。 「きついやろ?」  サトちゃんが気を使って話しかけてくれる。  うんうん、とうなづく私。 「これだから芝畑はあまり行きたくないやんね。海や川なら下りるだけやから楽だし楽しいけど……芝畑は一回行ったら満足するやろうから、明日からは海とか川に行こうね。あ、台風とかがいなくなってからばってん」  うんうん、とまた二度うなづき、私は声を出さずに笑った。 「笑い声もないんやねぇ、不思議」  サトちゃんは心底不思議そうな顔をしていたので、また声を出さずに笑った。  到着して辺りを見渡して驚いた。芝畑というか、上の方から眺めるとそこには芝しかなかったからだ。  ずっと懸命に登ってきた道も芝と芝の間にあった細い道だった。芝の合間に田舎特有なのかわからないけれど、林がちょこちょことあったが、それ以外は芝しかない。小屋みたいなみすぼらしい建物が林の側にあることがたまにあったが、それ以外では家もその他の建物もないし、車も見当たらない。こんなに芝畑を作ってどうするんだろうって思うくらい、芝芝芝…… 「びっくりしたやろ?」  まん丸くした私の目を見てナオちゃんが笑った。その様子を見てレンくんも笑った。私は芝畑を指さして首をかしげた。
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