1.

5/6
前へ
/62ページ
次へ
「耳が悪いと?」  首を横に振り、体を起こして両手を合わせ右頬につけて目をつぶり、すやすやと寝ているポーズを作った。 「寝とったと?」  うんうん、と二度うなづく。 「こんなところで?」  一度うなづく。私はどうしてもまだ納得がいかず、この少年を指さし、口をゆっくり大きく動かした。 (か、み、さ、ま?)  少年はすぐ理解してくれた。 「神様?」  二度うなづく。 「神様って俺が?」  一度うなづく。  目を見開き、一瞬の間が開いた後、彼の朗らかな笑い声が境内に響き渡り、もう少しでコダマしそうな勢いだった。 「こんな真っ黒に焼けたちびの神様とかおらんやろ。何でそう思ったと?境内から出てきたからか?」  それだけが理由ではなかったので、少し首をかしげて考える素振りを見せてから、一度ゆっくりとうなづいた。 「暇やけん遊んどっただけばい。お前どこの家の子や?」  神社の裏を指さす。 「廣沢のばあちゃんち?夏休みだから遊びに来とると?」  一度うなづく。 「そうなんや!じゃあ一緒に遊べばよかやん。もうすぐレンたちが来るけん。レンは六年生で、俺は五年生ばい。あと、他に女の子も来るけんよかろ?五年生と三年生の姉妹やっけんすぐ仲よくなれるったい」  少し首をかしげ不安になりながらも曖昧に一度うなづく。  
/62ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加