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2.
急いでナオちゃんを追いかけると、レンくんと思われる少年と女の子が二人立っていた。女の子二人は顔が似ているのでたぶん姉妹なのだろう。
「廣沢のばあちゃんちの孫らしい。ミコトって名前ばい」
ナオちゃんは後ろにいる私に目を向けながら紹介してくれた。
「へえ!私はリサキ。リッちゃんって呼んでね。こっちは妹のサトハ。サトちゃんってみんなには呼ばれてるかな。そっちの大きいのはレンくん。ねぇねぇ、ミコちゃんって呼んでもよか?どこから来たと?いつまでこっちにおると?」
リッちゃんは人見知りしない性格なようで、最初から目をキラキラさせて人懐っこく話しかけてきた。
私は目も合わさず返事もしなかった。不思議そうな顔をするリッちゃん。
「ああ、ミコトはしゃべれんと。でも耳は聞こえるけん。みんな優しくしてやってな!」
「しゃべれんと?」
「んんー」
返事をするナオちゃん。〈んんー〉は〈うん〉が訛ったものらしい。おばあちゃんもときどき使うので、優しい相槌を打つんだなあといつも思っていた。私はおばあちゃんの前でもほとんど話すことができなかった。
「全然しゃべれんと?耳は両方聞こえとるやんね?」
レンと紹介された男の子の声は落ち着いていて、口調もゆっくりで方言でも聞き取りやすかった。六年生らしいが中学生くらいの風格がある。
私はレンくんの方を向いて両耳を指さし、二回うなづいた。
「ふーん、そうなんや」
レンくんはふんわりと笑った。このときから彼の目尻の皺は変わらない。
「今日は手始めにどこに行こうか?」
ナオちゃんは私を見て言った。首をかしげる私。
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