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それは突然の出来事だった。
8月8日。
半日で仕事を終え、引っ越し荷物で部屋の中が狭くなっている部屋に帰ってくると、真っ先にシャワーを浴びた。
濡れた髪をタオルで掻きむしるように拭いていると、玄関のベルが鳴った。
「はい」
タオルを首に巻き、玄関を開く。夕陽が扉の向こうから差し込む。その光の中に立つ一人の女性の姿。
「久しぶりだね。元気だった」
その声は懐かしい声だ。
「嘘だろう・・・」
「嘘って何よ!また会えて嬉しく無いの?」
ふわっと優しい風が彼女の背後から流れ込む。風に乗る香りは、忘れもしない穂葉の香りだった。
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